2023年2月16日からこうなった!財務省のサラリーマン虐め「退職金搾取」の実態。
失われた30年から更なる失われる未来へ、財務省は経済成長を考えずに増税で乗り切ろうとしている、この愚かさ!
きょう(2023年2月16日)から、2022年分の確定申告期間が始まります。
今回からの大きなルール改定の一つに、「退職金」への課税ルールの変更があります。
また、これに関連し、2022年10月の政府税制調査会において、看過できない改定意見が出されています。
そこで、本記事では、退職金に対する課税の基本的なしくみと、政府税制調査会で提起された改定意見の問題点について解説します。
退職金に対する課税ルール
退職金は、「退職所得」として、所得税の課税対象となりますが、税負担が軽減されています。
なぜなら、退職金は「在職中の給与の後払い」的な性格をもつと同時に、仕事のない期間、特に老後の貴重な生活資金となるからです。
なお、「iDeCo」や「小規模企業共済」によって積み立てられたお金を受け取った場合も、退職所得として処理されます。
退職所得の計算式は、原則として以下の通りです。
【退職所得の計算式(原則)】
(退職金額-退職所得控除額)×2分の1
ただし、2022年分から、「勤続年数5年以下」の人については、課税が強化されることになりました。
すなわち、勤続年数が5年以下の場合は、300万円を超える部分の額については「×2分の1」をすることができなくなりました。
【退職所得の計算式(勤続年数5年以下)】
150万円+(退職金額-退職所得控除額-300万円)
これらの計算式における「退職所得控除額」は勤続年数により決まっており、以下の通りです。
- 勤続20年以下:40万円×勤続年数 ※最低80万円
- 勤続20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
このように、現行の制度は、勤続年数が長くなるほど優遇されることになっています。
2022年10月の政府税調で出た「退職所得控除」の改定意見
この現行制度に対し、2022年10月19日の政府税制調査会において、退職所得控除額について勤続年数で差を設けず、一律にすべきという意見が出されました。
その主たる理由は、勤続年数が長い人ほど有利にすると、「雇用の流動化」が阻まれるからということです。
すなわち、現行の退職金制度があることにより、「あと●年勤務すれば退職所得控除額が高くなるから、それまで転職は見合わせよう」「長く勤務すれば退職金が優遇されるからずっと転職せずにいよう」と考えるようになるというのです。
改定意見の問題点
しかし、これには、以下の問題点があります。
- 「退職所得控除額」が転職を思いとどまらせる要因になるか疑問
- 「雇用の流動化」が必ずしも良いこととは限らない
- 「サラリーマン」と「経営者・自営業者」を一緒くたにしている
◆問題点1|「退職所得控除額」が転職を思いとどまらせる要因になるか疑問
第一に、そもそも転職したい人にとって、退職所得控除額が転職を思いとどまる重要な理由になるかが疑問です。
どういうことかというと、転職を検討する理由は、以下に集約されます。
- 今よりもスキルアップしたい、給与を多くしたい
- 職場に不満があり環境を変えたい
いずれにせよ、転職を考える人は、現状に不満を抱えています。そういう人にとって、退職所得控除が果たして転職の抑止力たりうるか、つまり、現状に不満を持ちストレスを抱えたまま働き続ける代償としての価値があるのか、大いに疑問です。
特に、スキルアップ、給与アップのために転職しようとしている人が、退職所得控除で多少税金が優遇されることを理由に退職時期を遅らせることは考えにくいといわざるを得ません。
◆問題点2|「雇用の流動化」が必ずしも良いこととは限らない
第二に、「雇用の流動化」は必ずしも良いこととは限りません。
「雇用の流動化」には、「雇用主」と「労働者」の異なる立場からみた2つの側面があります。
- 雇用主の視点:人件費の節約、採用活動の効率化につながる
- 労働者の視点:転職しやすくなり、活躍のチャンスが広がる
このうち、雇用主側からみた「人件費の節約・雇用活動の効率化」は、現状においては、1990年代後半以降に数多くの企業・経営者があたかも「馬鹿の一つ覚え」のように推進し猛威を振るってきた「リストラ」という名の体のいい「首切り」に口実を与えるものでしかありません。
これに対し、労働者側からみた「転職しやすくなり、活躍のチャンスが広がる」という点は、前述のように、退職所得控除程度のわずかばかりのメリットによって抑制されるものとは到底考えにくいものです。
◆問題点3|「サラリーマン」と「経営者・自営業者」を一緒くたにしている
また、改定意見は、サラリーマンのみを想定している点に問題があります。
仮にサラリーマンの退職金について、改定意見に合理性が認められるとしても(上述のように合理性は乏しいといわざるを得ませんが…)、経営者・自営業者には、「雇用の流動化」云々はあてはまりません。
経営者や自営業者の場合は、むしろ、長年にわたって一生懸命に事業を継続したことへの報いとして、退職所得控除の特典を与えることに合理性があると考えられます。
このように、退職所得控除の制度が「雇用の流動化」を阻んでいるという理屈には合理性が乏しく、強引な論法といわざるを得ません。昨今なりふりかまわず「取れるところから取る」とばかりに増税に邁進する財務省の意向を色濃く反映している可能性があります。
政府税調で出た意見は、政府税調の委員の総意というわけではありません。あくまでも一部の委員の意見です。
政府税調の会長であり、現在の租税法学界の第一人者である中里実氏(東京大学名誉教授)は、「長期的な人生設計の前提となる制度の安定性というのは一定程度重要だ」と述べ、改定意見に対してクギをさしています。
しかし、政府・与党の増税に前のめりな姿勢をみるにつけ、今後、この一部の意見が大きな力を持つようになる可能性は否定できません。
退職金に関する税制は、老後の資金準備と密接に関わるものであり、今後、そのあり方に変更を加えるのであれば、正当性・合理性について、慎重な検討が求められます。桃源社