プーチンのウクライナ侵攻とドイツの憂鬱
プーチンのやりように閉口するドイツ
緊急事態
プーチンによるウクライナ侵攻は、ドイツのエネルギー事情を奈落へ突き落そうとしている。
ドイツは脱炭素社会へ向けてまっしぐら、昨年12月には予定通り、原発3基を停止、今年の12月には残りの3基をも停止す計画だ。
しかし、頼みの再エネである、風力発電とソーラー発電はままならず、いまや極端な電力不足に陥り、フランスやオランダ、ノルウェーからの電気を調達している。
この10年、原発を減らし、石炭火力を減らし、再エネにさまざまな援助を与えて舵を切ってきたドイツだが、再エネの発電量は不安定を極めている。
風力のほうが、昼夜を問わず発電するので、ソーラーより効率がいいそうだが、なぜか今年は風が吹かない。
結局、頼りになるのは、ガス火力ということでガスに集中した結果、ガスの需要と供給のバランスが崩れ、すでにドイツでは、家庭のガス料金が今年から平均6割も上がっている。
ドイツばかりでなく、欧州のエネルギ事情はロシアの天然ガスに頼っている。
メルケル肝いりで造ったバルト海の海底パイプライン「ノルドストリーム2」は、すでに安全確認も済み、バルブを開けるばかりだった。
ほんとうはロシアのウクライナ侵攻が無ければ、何事もなくすべてがうまく行くはずだった。
が、この度のロシアによるウクライナ侵攻により御破算になった。
もはや緊急事態です。ならば、止めた原発を再稼働すれば良いが、一度決めたら方向転換が効かないのは、我が日本とドイツは似ている。
誰もそのことには触れない。幸い欧州は陸続き、電気は他所から買うことができるが、それでは経済が立ち行かない。
依存
ドイツは輸入ガスの55%以上をロシアに依存している。
ノルドストリーム2はまさに希望の星だった。
ところでノルドストリーム2という事は、当然1がある。ただしこちらはノルドストリーム1とはいわない。
ただのルドストリームだ。
つまりこの2本の天然ガスにより、今後のドイツの工業生産は盤石になるはずだった。
それが全て使えないのであれば、とうぜん計画が立ち行かなくなる。
不足すればブラックアウトするから、よそから調達するか、高いガスで発電するしかない。
ドイツのロシアのエネルギーに対する依存は、2020年、55%を超えた。
ノルドストリーム以外でも、陸上パイプライン経由でロシアのガスは入っている。
ちなみにヨーロッパのロシア依存度は40%で、こちらも多いが、ドイツは桁外れに多い。
バイデンは、ロシア制裁によるガス禁輸で、欧州救済のために代替品を西側各国に要請し、我が日本も供給する。
考えてみれば、エネルギー海外依存度100%の日本にまで要請するとは、アメリカも落ちたものだ。
が、それらのガスは、LNG(液化天然ガス)なので、それを気体に戻すターミナルが必要なのに、パイプラインで生ガス対応のヨーロッパにはそれらの施設が決定的に足りない。
もっか建設と言ったって、この緊急時に間に合うのか?
結局、どうにもならなくなったら、石炭、褐炭を燃やすしかないだろう。
グレタさんのこめかみに青筋が浮く。
正義心が足を引っ張る
アメリカの要請に、ショルツ首相はついに、ノルドストリーム2の認可手続きをストップすると公言した。
ということは、代替ガス調達の目処がついたのか?
それとも、あちこちからのプレッシャーが大きくなり過ぎたためか?
恐らくは後者であろう。
国民は、ロシアに対する自国の毅然とした態度に大いに満足しているようだった。
後のことを考えずに、己の正義や理念に陶酔するのはドイツ人の特徴で、2011年、皆で脱原発を祝った時もそうだった。
ただ、そのせいでドイツの電気代はEUで一番高くなり、おまけにロシアガスへの過度な依存を招いている。
それを、誰も疑問を持つどころか、今、また同じことを繰り返そうとしている。
本来なら、昨年の暮れに止めたばかりの原発の再稼働や、今、動いている最後の3基の原発の稼働延長あたりを使う計画変更こそが肝要なのにそれはない。
そこがドイツ人らしいといえば、ドイツ人らしいが、果たしてこんなことでやってゆけるのだろうか?
いずれにせよ、ノルドストリーム2の認可手続き停止については「ガスの供給は安全だ」と保証しつつも、「ただ、ガスの価格は上がるだろう」ということを、苦渋の表情で発表した。
メドヴェージェフのツイートが可笑しい。
「1000㎥あたり2000ユーロを払うことになる新世界へようこそ!」と皮肉くる。
現時点で1000㎥当たりすでに828ユーロが、今後、さらに2倍以上に高騰すると警告しているのだ!
本当にそうなれば、ドイツ経済は破滅する。
認可手続停止の欺瞞
さて、それでは、ノルドストリーム2は、このまま葬り去られるのか?
どうやらそんなことにはならぬらしい。
「ノルドストリーム2の延命のため、ハーベックは巧妙なトリックを使った」
政府の宣言は、運開停止ではなく、認可の手続きを「停止」と言い換えれば認可すると言えばすぐにでも稼働する。という事らしい。
いずれにしても、ドイツ(欧州)はロシア無しで生きることは出来ない。
それを承知だから、プーチンは決行したのだ。
制裁が2年続くのか、3年続くのか今は分からないが、欧州のガス事情がロシア依存40%もあるものを、どこかが同じ値段で同量供給するところがあるとは到底思えない。
ならばロシアのパイプワイン全てのバルブが閉まることはないだろう。
そのうち少しずつバルブを開けて元に戻るのも案外早いかもしれない。
なぜなら、ガスストップで困るのは欧州ばかりではない、ロシアだって相当困るはずである。
そのためか、習近平にガスを買わせたプーチンの手並みは、波ではないという処か?
日本は大丈夫か?
いずれにせよ、ノルドストリーム2は破壊されたわけではない。
ドイツはそれは必要であり、それはロシアも必要なのである。
いずれ稼働する。
ドイツ政府は、将来はロシアのガスなど無くても、全てのエネルギーが賄える!
と世迷言を云っているが、あれはアメリカ向けの能書きだ。信じるわけにはいかない。
問題は、日本のエネルギー事情である。
日本のエネルギー政策もお粗末なのだ。
小泉進次郎の低脳内現象に見えたように、我が国も政治屋さんの頭の中はお花畑だ。
脱炭素なんて、脱退すべきだ。なぜなら日本の二酸化炭素排出量は4.7%しかない。
ちなみにアメリカは22%、中国19%、適当に、適当にやるのが正しい。
しかしだからと言って、高い燃料を使うことはない。
ここはつかえる原発は使う、これしかないが、これを進めることができない日本も、ドイツに負けず劣らずお花畑なのである。